スマホも地図アプリも無くても冒険は出来た❕中国から中央アジア ~シルクロード横断ディープ旅~ キルギスタン編⑩
<タムチ―~ビシュケク~国境>~ビシュケクの怪しい宿と一瞬の慌ただしい再会に歓喜!~
《ミステリアスな都会の隙間の怪しい宿に泊まる》
翌朝は起きてライアとお別れの挨拶をしてから表通りに出て、朝飯を食べてながら車をヒッチハイクしていたら割とすぐに捕まった。
そしてそのまま快適にビシュケクまで戻ってきた。ビシュケクは一国の首都としてはかなり小さく静かな感じだが、今まで小さな村や山などを回って来たので、ここがかなりの都会で忙しい街に映ってしまう。
もうさくらゲストハウスに行くつもりは毛頭無いのでマタンが噂で聞いていた、ビシュケクゲストハウスという所に向かう事にした。住所があるところは大きな建物で、古びた団地といったところ。この国にこんなデカい建物のゲストハウスがあるわけもなく、住所が間違ってるんじゃないかと思ったが、どうやら建物内の一室を間借りしてるだけらしい。
建物に入って7階まで階段で上がり、そのゲストハウスらしき一室の前まで行くが、何も看板はなくメチャクチャ怪しい。ドアを開けたらいきなり目隠しでもされてどこかへ連れ去られでもしそうな雰囲気がプンプンしている。
意を決しその一室の玄関を開けると、一人の若く色の黒い青年が出迎えた。
そこは狭いダイニングスペースがフロント件共有スペースになっており、部屋は無理やりドミトリーにした2部屋のみ。1部屋が4畳くらいの2人用で、もう1部屋は6畳くらいに無理やりベッドと3つおいたドミトリー。結局ここには最大5人しか宿泊出来ず、管理してる若い男は夜には家に帰ってしまい、後はほったらかしと言う何ともミステリアスな宿だった。
パスポートも見せずにチェックインを済ませると俺とマタンにあてがわれた部屋は3人部屋の方で、先客のオランダ人と一緒だった。
《予期せぬ一瞬の再会》
荷物を置いて明日のウズベキスタン行きのバスのチケットを買うため、マタンとバスターミナルに向かった。
すると何とそこであのスイス若造コンビのヘイドリアンとビクトールに再会した!
あまりの偶然にお互いテンションが上がりお互い”どこに行ってきたんだ~?”なんて盛り上がった。奴らはこれからもう出発だというのに相変わらずお構いなしにバスを待たせていたら、ドライバー達が彼らを置いて行こうとし出したので彼らは慌ててバスに乗り込み、ウズベキスタンでの再会を約束して慌ただしく別れた。
それにしてももう出発というタイミングで何という偶然か!
この調子だとまたウズベキスタンのどこかで会えそうだ!
その後明日のバスのチケットを買い俺はマタンと二人でオシュマーケットという、キルギスタン最大のマーケットに行ってみた。
ここは食材がカラフルで、色とりどりのスパイスや、何とライスまでもがオレンジやら黄色やらと賑やかだった。ライスって白とブラウンだけじゃなかったんだ、いつか試してみたいな、オレンジや黄色の米。
しかしそんなカラフルな品物を眺めて楽しんでいる俺を尻目に、またマタンが訳の分からない行動に。自分がここに来たいと俺を誘っておきながら、マーケットに入るやいなやいきなりやっぱり俺は疲れているので帰る!と踵を返し行ってしまったのである。。
まさに奇行である。。俺はそろそろ奴の情緒不安定な言動と散発する奇行にうんざりとしていた。
宿に戻ると同部屋のオランダ人のロバートに加え、イスラエル人の女の子などもいた。更に後からイスラエル人が2人来たりと、この宿はメッカのようにイスラエル人によって支配されてしまった。
俺はオランダ人のロバートと話していたのだが、彼はここに数日泊まっているらしく、俺達の前にいた宿泊者は入れ替わりで出て行った一人の旅行者を覗き、彼以外全てイスラエル人だったという。ロバートはイスラエル祭りにすごくうんざりした様子で、ようやく俺が来てイスラエル人以外と会えて良かったと言っていて、ほっとしたみたいだ。
彼は俺達とは逆方向でウズベキスタンから来ていたので、色々と有益な情報を教えてもらった。
まずウズベキスタンでは個人旅行者で正規のレートで両替する人間など誰もいなく、皆旅行者は闇両替で両替するのだが、良いレートを提示してくる人間がどのマーケットのだいたいどのスポットに潜んでいるのかとか、その際の最新のレート比較などを教えてくれた。
更にその際USドルかユーロの現金が必要になるのだが、ウズベキスタンでは外貨のキャッシングが出来るATMを探すのに一苦労するので、ここキルギスタンでUSドルを少しキャッシングして行った方が良いなど。
そしてこれらの情報は実際にウズベキスタンで大いに役立ったのである。
彼からは他にもウクライナ・グルジア・アルメニア・シリアなどに行く事を強く勧められた。特にウクライナの美女達がお気に入りらしく、ウクライナはマストで行く国だ!普段無表情な奴がそこだけは熱く唾を飛ばしながら語っていた。
《美少女との出会いに後ろ髪を引かれながらの、キルギスタンとの別れ》
翌朝は特に急ぎの用が無いのでロバートを見送ってまったりして、スーパーでビーフの缶詰などを買ったらめちゃ不味かった。
そして一人で13:00頃出かけて、ここに来て初めてビシュケクの街をゆっくりとブラブラしてみた。
途中大きな大学や綺麗な公園などや博物館を外から眺めたりしたが、中心街はやはり大きくはない。思ったより緑があり綺麗に整備されている印象だ。色々と歩きまわっているとやたらにこの街は公園が多く、人々もたくさん平日の昼間からまったりしている。
そして偶然子供用のアミューズメントパークみたいなのを発見したので、そのまま中に入ってみた。
平日の昼だというのに夏休みだからか人手が多く賑わっている。移動遊園地のような小さい観覧車やメリーゴーランドなどたくさんのアトラクションがあり楽しい雰囲気だ。暑いのでアイスを買おうとしたら、そこにいた4人組の女の子の一番年長の子に流暢な英語で話しかけられた。
彼女はアメリカに住んでいるらしくホリデーでキルギスタンに来ているらしいが、思いっきり見た目はキルギス人である。ただ周りのキルギス人と比べると、派手ではないがあか抜けて洗練された雰囲気を持っており、ハッキリ言って可愛かった。おそらく小さい頃アメリカに移住したか向こうで生まれたんだろう。英語は完全にネイティブのものだった。
彼女は3人の年少の妹達を抱えていたが、その4人姉妹の一番上のお姉さんで現在アメリカで大学生をやっているとのこと。
そのままそのお姉ちゃんと話していると、
今は妹達の面倒を見なければならないけど、夜になれば一人になれるので会えない?
みたいな感じでさらっと誘われた。
カザフスタン以来の女子大生からの逆ナンである!
しかし何故か血迷った愚か者の俺は、
“今夜ウズベキスタンに向けて友人(マタン)と一緒に出発する予定なんだ“
と、この先生きていて二度とないチャンスかもしれないのにも関わらず、あのヒゲ野郎とのどうでもいい約束を守り、心にもない事を言い自分からそのチャンスを棒に振ったのだ、あ~~~~~~~~俺のバカ!!
すると彼女から残念そうに、”しょうがないわね、グッドラック”
的な感じを言われ、プリティ4姉妹の長女とのラブロマンスの絶好のチャンスを自ら手放してしまったのである。。
とたんに勿体ないことをした~~~!!!と悔しさが込み上げて来た。
みるみる遠ざかっていく彼女の後ろ姿を見て、後悔の大波が押し寄せてきた。
くぅ~~、ここ最近色々とタイミングが合わないぞ。。俺は改めてチャンスの神様は後ろを振り向いてくれない事を実感した。。
よく考えると、ってかよく考えなくても、俺は別に今晩出発しなければならない理由などマタンとの口約束以外なかったのだ!しかもマタンとはウズベキスタンに入ってすぐ、奴は幼馴染と合流するので別れる予定なのだ。
この情緒不安定なヒゲ野郎とプリティな女子大生とを、天秤にかけてもどうみてもヒゲ野郎が勝つ要素など無いのだが、ここまできた旅の道連れを最後までちゃんと見届けるんだという、それこそ『ドーハの悲劇の時の武田信宏』くらい役に立たない誠実さが俺の中の奥底にあり、マタンとの約束を優先させてしまった。。。。。
あ~~~~~~、律儀な自分が嫌になる
《西へ、西へ、国境越えの悪夢と怪しい人々》
そのアミューズメントパークを去った後、一旦宿に戻って飯などを作ってまったりした。
そして夜バスターミナルに行くと今回は大型バスである。久々のちゃんとしたバスに少しテンションが上がる。
そしてバスは信じられない事に、時間通りに出発してスムーズに国境へ到着した。このルートはウズベキスタンへの最短ルールなのだが、もう一度一瞬カザフスタンに入国せねばならず、その為にわざわざカザフスタンのトランジットビザをビシュケクで取ったのである。
国境に着いたまでは良かったのだが、俺達を含む乗客が皆検問を無事通過してもバスのドライバーが一向に来ず延々と待たされている。何が起こっているのかローカルの他の乗客に身振り手振りで聞いてみると、何やら運転手の荷物か何かに問題がありそれで捕まっているのだと言う。
何か余計な物を小遣い稼ぎに運んでるんじゃないだろうか?
中国~カザフスタンやカザフスタン~キルギスタン間などの国境も混沌としていたが、おそらく色んな良からぬものを持ち込む輩が多いんだろう。アホドライバーを待っている間、ここら辺にはだたの掘立小屋のオフィス以外何も無いので、俺達乗客は外で待っている状態だ。
おまけに何もない荒野の夜なので夏といえども冷え込んで来た。そこで俺のキャンプ用マットを道路の端に引きマタンとシェアしてしばらく寝ていると、マタンはこの状況でも普通に熟睡しやがったが、俺は寒くて荷物なども心配でなかなか眠れなかった。
道路をぼーっと眺めていると色んな人が国境を越えているが、ちょくちょく上半身がパンパンに張った人達が並んで歩いている。
どうやら何かの運び屋なのか、腹に荷物を入れて税金か何かを逃れるためか、ジャンパーの下が不自然に膨れ上がっているのである。その気持ち悪い″上半身だけデブ軍団″が並んで行進しているのを見て、俺達は”Marching of dodgy fellows-怪しい奴らの行進“と呼んでそれを見て暇つぶししていた。
そんなこんなでロクに眠れずに待ち焦がれ、ようやく5時間も待たされてバスは出発した。