スマホも地図アプリも無くても冒険は出来た❕中国から中央アジア ~シルクロード横断ディープ旅~ カザフスタン編②
<アルマティ滞在>~早くも中央アジアのホスピタリティーの洗礼を受け、怒涛の日々が始まる~
《ローカル生活と新たな出会い》
あんなに疲れていたのにも関わらず、興奮していたためか翌朝7:30頃スッキリと目が覚めてしまった。
皆起きて来たので朝飯食って家の目の前の丘の上に行こうという事になったが、ここでもスイス2人組の提案でキテレツな行動に出る我々。
丘の頂上にはぐるっと回って歩いて行くか、ロープウェイで上がるかの方法があるのだが、どちらもとらずにショートカットをしようという事になり、目の前の斜面を無理やり歩いて登って行くことにした。
俺達はまるで”魁!男塾の羅俱美偉(ラグビー)”のように、とにかく目の前に木や障害物があろうととにかく真っすぐに頂上を目指し上り始めた。
登ってみると実際密生した植物が邪魔になり、またトゲがあるものが多く一歩歩くたびに刺さってとてもまともに歩くことが出来ない。スイス2人組はトレッキング用の恰好をしているからいいが、俺とElranはこんなクレイジーなハイキングをするつもりなど毛頭無かったので、半袖半ズボンという軽装で来てしまったため、直接皮膚にトゲが刺さり更に地面も前日の雨ですべりやすいので、這いつくばり擦り傷だらけになりようやくまともに歩けるようなルートに辿り着いた。
それにしてもこのスイスコンビといると、とにかく物事を全て無茶苦茶にするので毎日がジェットコースターのようである。
頂上に辿り着くとそこはミニテーマパークみたいになっていて、ボロいローラーコースターやその他アトラクションなどがあり公園にもなっている。ここは見晴しも良く、天気も良くなってきていたので遠方にそびえ立つ天山山脈の雪山がくっきりと見える。
よく考えればこんな、国で2番目の都市の真ん中からこんなにもくっきりと雪山群が見えるとは新鮮な感覚だ。
公園内をブラブラしているととんでもない大きなブランコがあってびっくりした。このブランコはシーソーのように両端に一人ずつ乗り、お互いに前後に大きく揺らして遊ぶものらしい。
見晴のよいスポットで皆で写真を取ろうとしたら、若い女性が一人でいたのでその人に頼むと英語が流暢だったのでそのまま話はじめると、彼女は地元にある外資系のオイル関係の会社に勤める20代のOLだった。この国では都市部に住むエリートは英語が結構出来そうだ。
結局その子、アゼルも一緒に町の方に降りケバブ屋で軽く食べた後、昼飯を作る食材をスーパーに入り探した。メガスーパーという巨大なスーパーは中も綺麗で値段もオーストラリア並みに高く、高級食材店といった感じだ。
今日はお世話になっているElran達に俺達が料理をふるまう予定なので、俺はイタリアンレストランで働いていた時のメニューのアイフィレのストリップという料理を作る為、必要な食材を探したが、なかなか見つからず公園で知り合ったアゼルに手伝ってもらった。
アゼルの助けもあって食材を無事手に入れる事が出来たが、俺達が彼女にこのまま一緒に来ない?と誘ったが女の子は結局来ない事になった。
客観的に見て彼女と俺がいい感じになってきていた(主観でなく、いや本当に)のだが、俺は自分から連絡先を聞かず、積極的なヘイドリアンが聞いて早速口説き始めていやがった。
俺も女性好きではあるが、イマイチ世話になっているElranの事とかを気にして女の子にガンガン行けないのは、結局俺が常識人だからなのだろうか。。
俺は女性好きではあるが、最初に優先するのは男の友情である。
よって女性を誘う時もタイミングが合ったときやその隙間で行くのだが、こいつらは全くちがう。ヨーロッパ人の当たり前の考えなのか、若いからなのかとくにく自分のやりたい事・欲求が最初である。
そう、まるでアニマルである。
でも最終的に女性を持っていくのは結局後者の方なんだと、むなしく思う俺(なら構わず行けよ、と思う気もあるがやっぱりElranとかに悪いと思ってしまう)。。
家に戻って早速料理を始める俺達。今回俺がストリップアイフィレを作り、イタリアンの血が入っているビクトールはカルボナーラ、ヘイドリアンは応援という事で。
慣れないキッチンでの格闘だったが、俺の方は何とか味は整った。ただビクトールのカルボナーラはお世辞にも出来がいいとは言えず、それどころかパスタは伸びきっているわ、味はないは卵は分離してるわで一体何の料理だかさっぱり分からない程のヒドイ出来栄えになった。
ビクトールは作る前ミシュランシェフ張りに自身満々に意気込んでいたが、何が本場のイタリアンなんだか。。
カルボナーラ作った事あったんだろうか、それどころか食ったことすらないんじゃないのか?という程お粗末。
案の定、後から帰って来た妹とその彼氏は、カルボナーラには殆ど手を付けずに一口食って残していた。。そして俺の肉と一緒に元々家にあったパンを食べていた。。
D15 地球の歩き方 中央アジア サマルカンドとシルクロードの国々 2019~2020 (ウズベキスタン カザフスタン キルギス トルクメニスタン タジキスタン)
《嘆きのダブルデート?・イン・シーシャバー、からの逆転JDに逆ナンパされる》
そして夜はヘイドリアンが何と昼間の女の子アゼルとデートするというのだ。
ちゃっかり電話番号を聞いていたこのスケベ野郎は、俺達がキッチンで格闘し料理をふるまっている間にこまめに連絡を取り合い、今晩会う約束をしたらしい。
俺の事も誘うので、勿論他にも向こうは女の友達呼んでいるんだろうな?、と聞くと友達を呼ぶようにお願いしてあるとのこと。しかしさあ出かけるぞという時になってヘイドリアンのバカは、実はもう一人来る友達はロシア人の男だと言い出した。
俺は勿論憤り、“誰が一緒に行くか!お前一人で行って来い!”となったが、それを聞いて急に調子ノリのヘイドリアンが心細そうに一人で行くのは怖いと言い出した。
確かにロンリープラネットなどでもカザフスタンの都市部は夜強盗などが出るので旅行者は注意するようにと強く喚起しているが、それにしても別に大丈夫だろう。
ただ俺が行かないと言うと、ヘイドリアンは“大丈夫、一人で行ける”などと強がっていたので、20歳の小僧相手にそんな突っぱねるのもあれかなと思い、俺もついて行ってやることにした。
するとやはり実際はびびってたらしく、“ヒロに貸しが出来た~”とほっとした様子で喜んでいた。
いや、やっぱりこういうガキを甘やかさない方が良かったかな。お人よしだな、俺も。
その待ち合わせ場所はシーシャというイスラム圏の水たばこが楽しめるおしゃれなバーだった。行くと昼間の彼女・アゼルと、もう一人本当は女の子がきてるんじゃなか?、と期待も空しくアレックスというロシア人の男が座っていた。。。
ただアレックスは本当にロシア人?ってくらいくせのない綺麗な英語を話し、どうやらアメリカに留学してたらしく、その時の思い出を楽しそうに語る。あまりロシア人の男ってこんな柔らかいイメージがなかったが、こんな奴もいるんだなってくらい爽やかで親しみやすい男だった。
ただ彼に今後俺達がこの先、東ルートでのトレッキングしながらキルギスタンへの国境越えを果たすという計画を話すと、そっち方面のルートや国境は開いていないだろう、との事。
今企てている俺達の計画は無茶なんだろうか?
そして男3対女1の奇妙な時間も過ぎて行き、アレックスは明日の仕事の為帰った後、前のヘイドリアンとアゼルが俺に構わずいちゃつきだし、俺は店にいる客の顔を全て覚えられるくらい暇をもてあます展開となった。
ここでやっぱりなんでこんな所に着いてきちゃんだろう?と再び後悔したが、それこそこんな夜中にガキ一人おいて行くわけに行かず、ぼーっとしているとなにやら隣のテーブルの方から、“ニーハオ、アニョハセヨ、アリガトウ”とか聞き覚えのある単語がおかしなアクセントで聞こえて来た。
そちらを振り返ると若いピチピチの3人組の女の子達がこちらを見ているではないか!どうやら俺が中国人か韓国人か日本人なのかを、彼女らは話していたらしく、こちらに話掛けるタイミングをうかがってたらしい。
彼女達は3人とも20歳の女子大生で英語が出来た。テーブルを彼女達の方へ移り話をして、そのうちの一人と番号交換して近々あう約束をして午前3:30頃店が閉店になったのでヘイドリアンを連れて帰った。
まさに”棚からぼたもち”、”捨てる神あれば拾う神あり”である。”
なんだかよく分からない展開だったが、また別の新たな出会いがあったので今晩は良しとしよう。
《カザフスタン・ローカル事情と美人率》
翌日スイス2人がキルギスビザを取りに行かなければならないので、キルギス大使館に向かった。その合間にあのJum Minに会い、一緒に街をブラブラして今後の旅のどこかで合流する約束をしたが、なかなかお互いのタイミングが合わず、結局これが彼女と会う最後になってしまった。。。
皆と合流し、本屋で英語→ロシア語の会話集を買ったが、これが後にすごく重宝する事になるとは。
街をブラブラしていると、このアルマティの街自体は特に何の特徴もなく全く面白くないのだが、そこら中に美人が歩いている。Elranの付き合いで途中に寄った、彼が通う大学構内でも美人率が凄まじく、大げさかもしれないが美人率90%なんじゃないだろうかと思ってしまうほど美人が沢山歩いている。
そしてこの街で一番大きいというロシア正教の教会に行った。教会というイメージとは違い、外観も内装もかなり煌びやかな感じでどちらかといえばイスラムのモスクのようだった。中にはスカーフを頭に巻いた女性達がお祈りしたりしていてオーストラリアにはいない感じのクラシックなクリスチャンが見れた。
そしてカザフスタンに来て初の街の路線バスに乗って家に戻ると、また妹の料理が待っており、キャベツのトマト煮込みや肉料理などいつものように美味かった。今の所この家の料理が一番うまい。
今日はElranの大学の友人が来ており、何と22歳にして新品のベンツに乗っていた。なんだ、この国は? Elranもやたら金持っていそうだし、こんな若い子がベンツ600シリーズの新車に乗ってるとは。。
来る前にここがオイルや天然ガスが取れる資源国家だとは知ってたけど、来てみるまではただの寂れた田舎で、こんな風にそこら編でベンツやアウディが走り回っているとは予想してなかったな。
《余談・カザフ人と映画・Bora》
ところで余談だが、アメリカの映画でこのカザフスタンをパロディーにしたBoraという映画がある。それはとてもカザフスタンをバカにした内容なので、カザフ人からは非常に不評であり、その件に触れると顔が真っ赤になり込み上げる怒りで手が震える人が居るほどなのである。
それなのに『ザ・空気の読めない男・ビクトール』は、Boraについてどう思う? などと会う人会う人に聞いてやがり、一様に嫌な顔をされている。。
一体このスイスコンビの脳みその中には何という名の害虫が寄生しているんだろうか?。。
《人生初のベンツドライブ》
夕食後この友人のベンツでドライブした。この歳で恥ずかしながら人生初のベンツに心浮き立つ俺。そして何とも乗り心地の良いこと。道中全く揺れないのである!
しばらく走っていると彼らお勧めのデートスポット“President Park”に到着した。
ライトアップされた噴水や綺麗な建物をバックに音楽が鳴り響き、とても明るい雰囲気のデートスポットで、カップルだけでなく家族連れや友達グループとかもたくさんいた。ここで童心に帰り若い奴らとはしゃいで写真を撮ったり騒いだりする俺。
今までの印象は、カザフスタンは綺麗で豊かで進んだ国である。
ドライブは引き続き山の方や馬にのれる丘や、オリンピックゲームスタジアムに行ったりしてベンツな時間を満喫して帰ってきた。
《アルマティ最後の思い出》
翌朝は良く眠れたせいかスッキリとしていた。
そしてElranが大学に用事があるのでそれについて行った。彼は1か月後にアメリカ留学を控え色んなペーパーワークを抱えていたので焦っているのに、また脳みそにウジが湧きだしたスイスコンビがあれがしたい、あれは何だとか茶々をいれるので、さすがのElranもちょっとイラついているようだ。
大学内にはやはりいい女がいっぱいいてカザフスタンの底力が伝わってきた。
その後スポーツ店に行き今後のトレッキング用の道具を探した。
2人はチベットなどでトレッキングをしてきているので、既に殆ど道具はそろっているのだが、俺はなにも用意してないので揃えなければならない。ただ金もあまり使いたくないので、最低限必要なテントとトレッキングシューズを購入した。
家系が裕福で良い道具を揃えているスイスコンビの品物とは、全て程遠い安物を選んだが、大丈夫だろうか?
その後はローカルマーケットに行き、山での食べ物としてドライフルーツやドライミートやライス、香辛料、缶詰、お茶などを買った。ここでも“進撃のバカ”ビクトールが巨大ソーセージに興奮し、これは何に見える?などとソーセージを股間の前にぶら下げて、店のおばちゃんなどに聞いて回りセクハラをしてとても嫌がられていた。。
なぜそんな事する。。しかも若い子ではなくおばちゃんに。
このマーケットではElranが今晩家で振る舞う地元料理“ビシュパルマ”の食材を買っていた。明日我々はトレッキングに向けて郊外に向けて出発するので、今日が彼と過ごす最後になる。
そして家に帰り早速Elranが手料理をふるまってくれた。
このビシュパルマというのは、馬の肉の下に塩ゆでした平たいパスタを敷き煮込んだ料理で、シンプルだが美味かった。
夜は例のシーシャバーで連絡先を交換した女子大生と会おうという事になっていたが、バイト終わりの夜遅くに会いたいと言われた。しかし誠実でまともな俺は最後の夜にお世話になりまくったElranをほったらかして、夜中に逢引きするような神経は持っていないので、泣く泣くその子とは会わずに終わる事になった。。
あ~~っ、俺ってしょせん常識人!!
アルマティ最後の夜は老けていった。。