スマホも地図アプリも無くても冒険は出来た❕中国から中央アジア ~シルクロード横断ディープ旅~ キルギスタン編⑧
<名も知らぬ村~カジサイ>~小さな村から村へとヒッチハイク&民泊のミステリアスな旅は続く~
《ヒッチハイクはお手の物》
翌朝はゆっくり寝て(この頃マタンはすぐ疲れたを連発するようになり、活動的にならず眠っている事が多くなった)11:00頃家族と記念撮影をして出発した。
そして表通りに出て当たり前のようにヒッチハイクをしていると、一台の車が停まってくれた。
乗っていたのは気の良い若いカップルで、ポロい車だったので途中ガソリンを入れる時に少しガス代を渡すととても喜んでくれた。
そしてカジサイというまた小さな村で降ろしてもらった。ここも何があるというわけではない。
ここも湖のほとりに民家が点在し、集落の裏にはひたすら山があるのみだが、ここカジサイは今朝出た名も知らぬ村よりは若干家も人口も多そうだ。
ただやはり観光設備も何も整っていない田舎の村には変わりなく、俺達はいつの間にかこういう中央アジアの何もない田舎を、当ても無くフラフラとしている事に快感を覚えるようになっていた。
《まさかの超常現象に遭遇・夢か幻か!?》
そして湖で水に入ったりしてまったりしていると、天気が快晴だからなのか同じイシクル湖なのに今日は特別に水の色が綺麗だ。改めてこの湖は本当大きさといい海みたいだ!
そしてふと空を見上げてみると、
一瞬自分の目がおかしくなったかと疑うような、奇怪な現象が目に入ってきた!!
それは間違いなく虹なのだが、
なんと空の真ん中に横一本線の虹がデン!とある。
虹は今まで人生で何千回と見て来て、2重・3重虹や他にも珍しいダイナミックな虹などオーストラリアでは何度も経験してるが、こんな空の真ん中に横一本ピュゥッと真っ直ぐな虹などお目にかかったことない!何ともびっくりなキルギスタンマジック。
《もはやパターン化した民泊の法則の定義》
その後昼飯を食べて車を拾って村の中心部の唯一店がある場所へ。
店の前がミニ市場にでもなっているのか、数人のおばちゃんがそれぞれ野菜を地べたに並べている。
そこで俺はふとあるアイディアを思いつく。
俺達のこのキルギスタンの旅には、パターンというかある一定の法則が生まれつつある。
今までのパターンからもここにホテルが無いことはわかる。ただホテルを探している旅行者がいるという噂が広まれば、また誰か泊めてくれる人が現れるのではないだろうか、といやらしい思惑が頭に浮かんだ。
俺はその噂を意図的に広まるようにして、泊まるところを見つける筋書を描いた。そしてその旅行者が宿を探しているという情報を効率良く広めるのには、この唯一人が集まるミニ市場周辺で動くのに限る。
俺はさっそくおばちゃん達とコミュニケーションを取り始め、自分達は外国来た旅行者で宿を探しているという風に伝えると、ものの見事にその情報は狭い村の中を右から左へと駆け抜け、しばらくすると一人の英語を解す若い女性が現れた。
中央アジアでは基本英語が全然通じずコミュニケーションの苦労は中国以上だが、キルギスタンの田舎などでも、一つの村に必ず一人救世主らしき英語を話す人が現れる。
そしてこの若い女性は不愛想だが部屋なら空いてるという。今回も料金は勿論お支払する。(思えばカザフスタンでは一円も宿代を使わなかったという奇跡を今思い出す)
そして案内された所は彼女が住んでいる一軒家ではなく、アパートのような古い建物の中の一室。カギを渡され必ず厳重に掛けるようにしつこく注意を促される。そんなに危ないのか、ここは。そういった雰囲気は無くのんびりとした村って感じだけど。。
この流れにマタンも“great job!”などといって俺を称賛し、ここ数日何て面白い宿に毎日泊まって面白い体験してる事に対して少し興奮気味だったが、俺もこんなにもあっさりとまさに自分が描いていたシナリオ通りの展開で宿が見つかるとは思わなかった。
ここキルギスタンでは何となくどう動いたら宿が見つかるか、みたいな方程式が分かって来た反面何か図々しい自分達が恥ずかしいという気持ちもある。が、今回も何とも不思議な村で不思議な所に泊まることになった事は当たりだった。
ただ肝心の部屋の中はずっと使っていなかったせいか、水は出ないわ部屋は汚いわねずみのフンがそこら中に落ちてるわ、なので2人で400COMに交渉した。家主の彼女TOKUNは24歳でピアニストをしてるらしい、部屋の汚さとそれは全く関係ないが。。。
《不器用男がユダヤ人の急造ヘアスタイリストになった》
少し部屋を片付けて、マタンの髪の毛を切る事になった。彼がバリカンを保持しており、ちょくちょくそれで長い旅の道中に散髪してたようだ。しかし俺は究極的ともいえる程の不器用。
余談だが中学の時の技術家庭の科目で、筆記テストが中間・期末共に100点だったにも関わらず、実技の課題作品の”木製のバッタ“があまりに下手で、成績が10段階評価で5だったくらい不器用で工作とかがヘタだったのだ。。
そんな日本有数の不器用だった俺が今、バリカンを片手にイスラエル人の襟足を刈り込んでいる。。
とりあえず一回バサッといってしまえば、あとは適当におおざっぱにがっつりと刈り上げてやった。出来上がりは見るも無残なデコボコの刈り上げ頭だったが、当の本人は満足げにいい感じだな、と喜んでいるのでまー良かった。
おそらく目をつぶってやっても似たような結果だったに違いない。。
そして今晩の食材を求め最初に行った村唯一の店に行き、ヌードル・パン・ヨーグルト・チーズというお決まりのベジタリアン用の食材を買ってきた。
その後部屋で夕食の下準備をしていると、窓の外で子供達が賑やかに遊んでいる声がするのでそちらの方を見ると、窓の外からこちらを覗いてきたり絡もうとしてきたりした。外人が珍しいのかやたらと興味津々で、子供の中にはロシア系もいてキルギス人と混ざって遊んでいるのでそれは良いことだと思った。
《湖の奥の燃え上がるような夕日を拝む》
すると窓の外が徐々に夕日に染まり真っ赤になって行く。あまりの燃え上がるような赤さに居ても立ってもいられなくなり、食事の準備を中断して一人で外に出てみた。相変わらずさっきの子供達がいたので近づいてみると、今度は一斉に恥ずかしがって逃げられてしまった。
だがそのまま一人で夕日の方を見ていると、湖の上の空が下から順に少しくぐもった水色から、上に行くに従って紫色、そしてオレンジから真っ赤に色を変えていてその変化と夕日が反射した湖のコントラストが素晴らしかった。
更に奥の山のシルエットを含め景色全体が沈んでいく夕日と共に色を変えて行き、有り得ない程幻想的な眺めにずっと暗くなるまで見入ってしまった。この旅でこれまでも何度か美しい夕日を見て来たが、これはこの旅一番、いや自分の人生でも間違いなくベスト3には入る夕日の絶景だった。
そして満ち足りた気分で部屋に戻り、味気無いベジタリアンディナーを食べ床についた。